最後の約束
僕のお父さんは透明人間になった。
皆は「死んじゃったんだよ」って言うけど僕は知ってるんだ。
だって病院に行ったとき、お母さんも妹の麻奈もいないときに
お父さんがこっそり僕にだけ教えてくれたんだ。
「拓、お父さんはとっても珍しい病気にかかっちゃってもう少ししたら皆にはみえなくなるんだ。
見えなくなっちゃったらお話もできなくなるんだ。でもね、お父さんが皆のことが見えないわけ
じゃない。お父さんは透明人間になっちゃうけど、ちゃんとお母さんや拓や麻奈のこと、見てる
からね。」
僕はまだ5歳だけど、男の子だからって教えてくれたんだ。
これって、僕を男として認めてくれたんだよね。
男は家族を守らなくちゃいけないって、お父さんがいつも言ってた。
僕はお母さんと麻奈を守るって「ぎむ」があるんだ。
まだ5歳だけど泣いてなんていられない。
だってお父さんと約束したんだもの。
男どうしのかたーい約束なんだ。
僕が約束を破っちゃったら、お父さんはみんなのことが見えなくなるんだって。
それは僕も悲しいもの。
さぁ、僕は今からうんとうんと強くならなくちゃ。
麻奈は泣き虫で、お父さんが見えないしお話もできないから泣いてばかりいるけど
そんな時は僕が、お父さんのお話をきかせてやるんだ。
お母さんは泣かないけど、やっぱりちょっとさびしそうにしてる。
だから僕は麻奈とけんかしないようにして、お母さんのお手伝いだってうんとするんだ。
お父さん、僕ねうんとうんと強くなるよ。
麻奈だってお母さんだって、ちゃんと守れるように強くなるよ。
ちゃんと見ててね。
お父さんとの最後の約束、忘れてなんかないよ。
だから僕がお父さんとの約束、ちゃんと守れたら
お父さんも僕との約束、守ってね。
「拓がお父さんとの約束を守れたら、その時はまたもう一度お父さんは皆と会えるしお話もできる
ようになるんだよ。」
僕の大好きな大好きなお父さん。
僕もお母さんも麻奈も、お父さんが大好きなんだよ。
作:これよか編集スタッフM |